使用者に対して残業代の請求を行うと数百万円もの請求が認められる事例も多くあります。

最近の裁判実務は、基本的に労働者に対して優しくなっておりますが、証拠が乏しければ認められる残業時間が全て認められず、金額は大幅に減額されてしまうのが現実です。

それでは、残業代の請求に当たって、残業の時間を裁判所に認めさせ、請求額の満額に近づけるために、労働者側はどのような証拠を集めておけば良いのでしょうか。

 

まず、最も大切なものは、実労働時間を把握するためにタイムカード等の使用者側が労働者の労働時間を管理するために作成している資料です。

裁判所は、タイムカードの信用性をかなり高く認めており、特段の事情の無い限り、タイムカードの記載通りの時間働いたことを推認できるとしています。

タイムカード等ない場合には、パソコンのログイン履歴や、ビルへの出退館時刻の記録、業務日報やシフト表などの証拠を集めることになります。

さらに、これらの資料もない場合には、労働者自身の作成したメモや、手帳の記載、家族へのメールなどを使って労働時間を立証することになります。

 

また、残業代を計算するに当たり、会社の就業規則・賃金規程の確認も欠かせない作業です。

会社側の就業規則・賃金規程の定め方しだいで、残業代計算の基礎となる賃金の額が変わり、結果として残業代の額にも大きな影響が出ることも少なくありません。

就業規則や賃金規程は、就業している間には自由に閲覧可能でコピー等をとることも出来ますが、退職してしまうと閲覧することが難しくなります。

出来れば会社に勤めている間に確保しておきたい証拠です。

 

上記の証拠が全くない場合でも、残業代の請求をあきらめることはありません。

弁護士に依頼した場合には、会社との交渉によってこれらの証拠を提出してもらう、または裁判所を通じて証拠保全の手続を行うことによって強制的にタイムカード等を保全してしまうこともあります。

また、使用者がこれらの証拠を廃棄してしまった場合でも、あるべき証拠(タイムカード等)がないこと自体が、使用者側にとって不利に斟酌されることもあります。

 

なお、使用者には、タイムカードを開示する義務があり、労働者側からの請求に対してこれを開示しないことは不法行為となる旨を判示した裁判例もあります。

弁護士法人翠